データで見るベトナム エレクトロニクス産業と自動車産業

ベトナム全般

ベトナム進出日系企業が苦戦するポイントとして、低い現地調達率が挙げられます。
日本円で2万円程度という名目上の最低賃金、豊富な労働力を求め、ベトナムへ進出したものの、部材が現地調達できない。
結局は中国・日本の輸入に頼り、見込んでいた収益を獲得できていないという企業は多いです。
データを元に、実態を考察してみました。
キーワードは

「電子機器の世界生産状況」

「自動車の生産台数」

「(日本の)自動車関連産業への就業人口」

です。

【目次】

 

 

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1.存在感を見せる韓国企業

投資案件数・投資額で日本と競う韓国企業ですが、直近のレポートでもやはり存在感は強いです。


(出典:ジェトロ記事   https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2019/a464000d5a7946e7.html)

投資金額・新規法人数とも右肩上がりを維持しております。
中でも韓国企業が得意とするエレクトロニクス分野での投資が目立ちます。

下図からも分かりますが、エレクトロニクス分野の中でも、スマホやタブレットはアジアでほぼ100%生産しています。(この事実はさすがに驚きました。)
世界の工場と呼ばれて久しい中国が高いシェアをキープしているのは納得ですが、中国に次いでベトナムが2位につけています。

韓国企業、ひいては中国企業も中国国内の人件費高騰を背景に、生産拠点を移しています。
通信機器については、ベトナムが今後の台風の目となることは間違いないかと思われます。

 

 

2.現地調達率アップを図る韓国系企業

下請け、孫請け企業がともに進出し、現地調達率を上げ、コストダウンを図るという定跡は勿論のこと、現地サプライヤーへの指導も積極的に行っているとのニュースもあります。

サムスン電子ベトナム、現地調達率57%に上昇―サプライヤー215社(VIETJO)

 

2014年から2017年の3年間で、現地調達比率を35%から57%まで引き上げたというので驚きです。
ここら辺からも、韓国企業の意思決定の速さは伺えます。

ハイフォンエリアですと、LGの旗艦工場があり投資に次ぐ投資で増床工事の終わりが見えないほどになっています。
従業員証を首からさげた出張者も多く、夜の繁華街では圧倒的に日本人よりも見かけます。
朝になると観光バス1台が満員になるほどの従業員を載せて、ホテルを出発します。
彼らが、現地企業の指導も行っていると考えるとその数にも納得いきます。

 

 

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3.ベトナムの自動車生産台数

下の表をご覧ください。
東南アジア最大の自動車生産拠点であるタイとベトナムの比較です。
参考として日本のデータも載せています。

やはり、自動車となるとベトナムの存在感はぐっと下がります。
上記資料は完成車の生産台数であり、現在ベトナムでは外資自動車メーカーの組立が主な自動車産業となっています。
トヨタ、日産、Honda、米国GMは自社のベトナム工場で、マツダ、KIA、現代はTHACO(ベトナムの組み立て会社)によって組立を行っています。

ビンファストの登場で、今後10年の産業構造はまだ予想できませんが、現時点では自動車産業は組立に留まっており、生産の移転は進んでおりません。

 

 

4.日本における自動車関連産業への就業人口

一方、日本にとって自動車産業はお家芸とも言えます。
EVへのシフトチェンジで今後も存在感を維持するためには、さらなる革新が求められますが、家電産業と比べると2000年以降もその地位を守り抜いてきたと言えるでしょう。

そんな自動車産業に従事する日本の就業人口の比率は約8%と言われています。
少子高齢化で就業人口が減少しているとは、約1割もの比率は引き続き高いと言えます。

(参考データ:一般社団法人 日本自動車工業会

さらに、自動車が走るには道路・高速道路といったインフラ整備が必須になります。
以前テレビで放送されたドラマ『LEADERS リーダーズ』で豊田喜一郎をモデルとした愛知佐一郎はこんなことを言っていたのを覚えています。

「自動車が走れば、それに付随する産業だけでなく、道路が出来る。人々の生活が変わる。」

モビリティとしての自動車が日本人の生活を大きく変えたことは間違いありません。
ベトナムでも産業としての自動車製造が確立した場合は、日本の再現となるのでしょうか。
もしくは、日本のはるか上を行くでしょうか?

 

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5.自動車産業と裾野産業


(ベトナムでよく見かけるイノーバはタイからの輸入車)

 

どこまで直接的な関連があるかは不明ですが、自動車産業の未成熟をベトナムの製造業発展の遅れと結びつける声もあります。
また、ベトナム政府も自動車を工業化に不可欠な産業として位置付けています。
こんな政府発表も過去に出されています。
政府発表の日本語訳文:JETRO資料

確かに、ベトナムで生活していると、モビリティとしての自動車の必要性のみならずインフラ整備の必要性を感じる事は多々あります。
信号機、道路、道路標識の未整備によるカオスな渋滞。
到着時刻が不明確な宅配業者。 など
知らず知らずのうちに日本人は自動車の恩恵を受けています。
発展途上国で生活すると、それに痛いほど気付かされます。

生活が豊かになって自動車が普及するのか、生活を豊かにするために自動車を普及させるのか。
ベトナム政府の動きを見ていると、イマイチ方針が見えてきません。
しかし、我々中小の事業者にとって、自動車産業が発展し裾野産業の底上げが行われることは、今後ベトナムでビジネスを行うにあたって生命線とも言えます。
そもそもの体力が大企業ほどない中小事業者こそ、国の政策による影響を真っ先に受ける存在だからです。

 

 

6.まとめ

現在、エレクトロニクス事業が中心のベトナムですが、今後の産業構造はいかに変化していくのでしょうか。
主題に戻り、「日系企業が苦戦する、現地調達率の低さ」を考えてみましょう。

ベトナムへ進出している日系メーカーの業種を見ますと、エレクトロニクス関連のハイテク企業は少数派です。
やはり目立つのは、古くからある製造業。
金属加工、プラスチック成型、金型屋など、日本では人材確保が難しくなった業種が多いです。
こうした事業分布を考えても、ベトナムの産業の主流がエレクトロニクス事業にある間、日本企業は現地調達での苦戦が続くと予想されます。