不良在庫の正体

企業会計

【目次】

 

 

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1.不良在庫とは

経理業務を経験したことがない人でも、言葉くらいは耳にしたことがあると思います。

滞留在庫、不動在庫とも言い、こちらの方が理解し易いですね。一言で言えば、売れ残りのことです。

広い意味では、「汚れて通常価格で販売できない製品」も含まれるようですが、ここでは「綺麗な新品なのに売れ残った製品」くらいで説明していこうと思います。

不良在庫と通常在庫の違いは、せいぜい売れる見込みが高いか低いかです。

貸借対照表には「棚卸資産」として、通常在庫と一緒に記載されます。

(これがある意味ポイントです。)

経営者や経理責任者が、「これは通常在庫だ!必ず売れるんだ!」という信念のもと財務諸表を作成すると、棚卸資産の部に買った当時の価格で残ります。

ただ、考えてみて下さい。

初代ゲームボーイ、MDウォークマン、おニャン子クラブのCDが、仕入れた当時の売価で販売できますか?

(プレミアとかは除くとして・・・)

 

 

2.適切な会計処理

では、不良在庫が見つかった場合、どう処理すればいいのでしょうか?

選択肢は2つあります。

①物理的に処分してしまう。(捨てる)

②帳簿価額を引き下げる。

まず①については非常に明確です。物理的に捨ててしまうので、資産そのものが無くなります。

ですので会計処理も明快です。

(借方)商品廃棄損  *** / (貸方)商品  ***

仕入れた当時の金額を、そのまま費用として処理する方法です。

当時2,000円で仕入れたゲームボーイをゴミ箱に捨てる訳ですから、2,000円はまるまる損という訳です。

 

②については少し議論があります。

①と異なり、処分はせず倉庫に在庫を持ち続けます。

「捨てる訳じゃないから、仕入れた当時の金額で据え置けばいいんじゃないの?」と思われるかも知れませんが、会計基準というのはそこまで甘くありません。

「当時2,000円で仕入れたゲームボーイは、今いくらで売れるの?」という議論が起こります。

「プレミアが・・・」という意見もあると思いますが、先述の通りプレミアという概念は頭から外して下さい。

常識的に、量販店で初代ゲームボーイを現在も連続販売してるところはありません。

つまり、適切な市場がなく、市場での売却は不可能という扱いになります。

となると、会計上はゼロ円までの引き下げが迫られる訳です。

つまり、

(借方)商品評価損 *** /(貸方)商品 ***

という仕訳が発生する訳です。

 

 

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3.不良在庫を処理するメリット・デメリット

デメリットから説明した方が楽ですね。そもそも不良在庫が発生すること自体が経営においてはデメリットですので。

①デメリット

当然ですが、不要な費用(「商品廃棄損」、「商品評価損」)が発生するので、利益が減少します。

規模によっては、最終損益が黒字から赤字に転落し、株価の下落へと繋がります。

株価が下落する事で、株式市場での資金調達や銀行からの借り入れで不利を被ることになります。

 

②メリット

  • 税務面

デメリットにも記載しましたが、不良在庫処理の会計処理は利益を減少させます。

結果的に、法人税が課税される利益を小さくすることが出来ます。

あまり大胆に行うと、税務調査で損益調整の疑いを掛けられる可能性があるので、一定の社内規定に則って行うのがベターです。

  • 会計面(貸借対照表)

不良在庫を費用処理すると、貸借対照表上の棚卸資産の金額が小さくなり、財務諸表が綺麗になります。例えば、積もり積もった不良在庫を抱えている場合、在庫回転期間は必然的に長くなり、ROAの低下につながります。

「在庫回転期間」「ROA」の話をすると、2記事分くらい使ってしまいそうですので、本日は軽めの説明に留めます。

在庫回転期間とは、棚卸資産を売上原価で割った値です。かなりざっくり言うと、小さいほど優秀とも言えます。「回転期間の値が小さい」≒「短期間で在庫が売れていく」と表現できます。

基本的に在庫が売れれば、会社には利ざやが蓄積されていきますよね。そのサイクルは短いほど良いという訳です。

ROAとは「総資産利益率」のことで、当期純利益を貸借対照表の総資産額で割った値のことです。

この数値は、企業の投資効率を表します。

例えるならプロ野球が分かりやすいです。

チームA:金満でメジャーリーガーや他球団の高年棒選手を引き抜きまくり。年棒総額30億円。

チームB:生え抜きと他球団を戦力外になったベテランをやりくりし、年棒総額10億円。

どちらのチームも年間80勝でリーグ優勝したとしましょう。

どちらのチームが「投資効率」が良いですかという話がROAです。

チームA1勝あたり0.375億円。他方チームB0.125億円です。

答えは簡単ですよね。

メリット・デメリットの要点としては、「短期的には収益が悪化しますが、長い目で見れば翌期以降は経営指数が好転するよ。」という点です。

 

 

4.不良在庫と不良社員(ベトナムの場合)

シャレのようなタイトルですが、シャレでもなんでもありません。

商社でも製造業でも不良社員≒不良在庫という相関図、リスクが想定できます。

定期異動のある大企業ではレアケースですが、中小企業や海外法人では内部不正によって不良在庫が蓄積するというリスクがあります。

長年購買担当のポスト就いている社員は、サプライヤーとずぶずぶの関係になっていることも珍しくありません。

不要な在庫を仕入れて、サプライヤーの担当さんの業績をカサ上げする。最悪の場合は、サプライヤーからキックバックを貰っている可能性もあります。

特に、私が現在働いているベトナムにおいてキックバックは不正の代表例でもあります。

「人事が採用の便宜を図る」「税務署職員と結託して、内部不正の情報を横流しする」「工事代金の水増し請求」など

短い期間しかベトナムで駐在していませんが、多種多様な不正を耳にします。

一番の原因は、社内での不正が常習化・習慣化しているということです。

「みんながやっているから」「前からやっているから」という心理で不正が横行しているのです。

採用時の雇用契約書や就業規則でも「キックバックを受け取らないこと」という条文が必ず織り込まれるほどに一般的なのです。

ベトナム進出セミナーなどでも頻出の論点ですが、クリティカルな対策はまだ聞いたことがありません。

よくある対策としては、「購買担当や人事担当を定期的にローテーションする」といった程度のものです。

経営者目線で考えますと、見積もりを取って、それが予算内の価格であれば良しとするのか、「僅かな不正も逃さない!」という厳粛な姿勢で臨むのか。

労力と影響額の規模を考えての意思決定が必要です。

製品の需給予測とは別に、人間の心理もケアしなくてはいけない。

やはり、海外でのビジネスは甘くありません・・。

 

最後、少し話が逸れました。

以上、簡単ですが、不良在庫+αの説明でした。