短期出張者の個人所得税(PIT)申告と納付について

ベトナム税務

ベトナム駐在初心者(私のように)で不安になるのが「短期出張者の個人所得税(PIT)」ではないでしょうか?

基本理念として、「ベトナムで1日でも働いたなら、その期間に見合った報酬ぶんだけ納税しなさい」というモノです。

色々とコラムや記事を読んでいくと、非居住者にたいしても所得税を課税するというのはかなり珍しいルールのようです。

ただ、このルールの運用、企業によって取り扱いが異なりますし、コンサルや会計事務所、ジェトロによっても説明の切り口が異なります。(私の理解力が乏しいというのもありますが・・)

守秘義務もありますので、弊社の具体的な運用は説明できませんが、ネット上での世論を少し纏めてみます。

 

【目次】

 

 

スポンサードサーチ

1.出張者の定義

まず、出張者の定義についてです。立ち上げたばかりの工場で考えると分かりやすいかと思います。

現地に常駐する日本人はGD1人ですが、品質管理や作業手順、取引先対応など、立ち上げ初期は、本社から各部門の責任者が頻繁に出張に行くことが想定されます。

 

設備の使い方や書類の管理方法など教育をメインとした出張が続くのではないでしょうか?

これら出張者の滞在日数は1年間の半分(183日)以下で、かつホテルでの滞在が基本かと思います。

明確には異なりますが、今回の記事では出張者≒(ベトナムの)非居住者という扱いで進めさせて頂きます。

 

給料の負担ですが、特に立ち上げ初期の場合は現地法人の収入が限られているので、全額(飛行機代・ホテル代・食事代など)本社負担という想定になります。

(日本の税務実務ですと、出張者の費用を現地法人ではなく本社が負担した場合、当該費用は寄付金として認定されてしまい、損金算入を否認されるリスクがあります。詳細は、こちらをどうぞ。)

https://www.oshikata-tp.com/information/pickup/trip/

 

 

2.各媒体での説明

さて、今回の主題について、私自身過去に何度もググりました。

ただ、ググればググるほど謎が深まっていくのです。

まず、ネット上で閲覧できる情報を元に各媒体の意見を載せていきます。

JETROhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2014/02/52f1ca983d860.html

ベトナム法人での給与負担がなければ、企業による納税義務なしという意見です。

ただし、注意が必要なのが「出張者個人には納税義務あり」としている点です。

文中で断言はしていませんが、読者目線でこの記事を読んだ私は「会社は納税しなくていいんだ。」という印象を持ちました。(*あくまで、私の感想です。)

 

SMBC(執筆:I-GLOCALハノイ):https://www.i-glocal.com/service/write/pdf/smbc_globalInformation_201803.pdf

納税義務が企業に帰属するか、出張者個人に帰属するかは明記されてませんが、ニュアンスとして企業に対して申告・納付を勧めているよう感じました。(*あくまで、私の感想です。)

 

 

スポンサードサーチ

3.各種リスク

中小企業の駐在社長であり、グループ内に明確な税務指針がない場合、かなり判断に苦慮するのではないでしょうか?

なぜなら、短期出張者といえども日本人の給与は単価が高く、現地法人の資金繰りを確実に圧迫します。また、駐在社長の判断で申告を行わず、税務調査で当該項目を指摘された場合は、大幅に資金繰りを悪化させる事項になります。

 

(注)ベトナム国内源泉所得=ベトナムでの勤務日数/365×全世界所得(税引き前)+ベトナムから派生したその他の課税所得(税引き前)

JETROの記事より抜粋した算式になります。

仮に、年収600万円の技術者が3人、ライン立ち上げの為にベトナムで30日間技術指導したと仮定しましょう。

ベトナム国内源泉所得 = 30/365日 × 600万円 × 3人 ≒ 150万円

個人所得税額(PIT:税率20%)= 150万円 × 20% = 30万円

 

ベトナムの延滞税(1日につき0.05%)が日々加算されていきますので、税務調査の時効期間である5年後に調査が来た場合は本税部分と合わせて約2.5倍の支払いが発生する計算になります。

実務上は、さらに罰金として加算税が追加されるので、よく聞くのは「4倍返し」、つまり本税の4倍程度の支払いを要求されるということです。

 

個人所得税(PIT)や外国契約者税などは、赤字の企業に対しても現金支払いを徴収することが可能ですので、税務署は特に力を入れて調査を行う領域です。

ベトナム独自のルールであることも相まって、申告漏れや計算の間違いも多く報告されている模様です。

 

 

4.実際、どうすればいいか

改めて申し上げますが、私はベトナム税務・法律の専門家ではありません。

今回の記事も、ネット上の情報を独自の見解で纏めただけのものですので、詳細は各自専門家へお問い合わせ下さい。

 

現地管理者としての意見を申し上げますと、専門家に相談したうえで、出張者の個人所得税を申告する・申告しないケースについて、メリット・デメリットを明確にした上で、グループ全体の方針を策定されることをおススメします。

 

ベトナム法人目線で語ると、「余分な費用は負担したくない。」。 本社目線では「寄付金扱いされて損金不算入とされる。」など各種意見はあるかと思います。

ただ、最も懸念すべきは、想定外の追徴課税で資金繰りが悪化することです。

各種リスクを冷静に分析し、グループ内で最善の決定を行って下さい。

 

本件、ベトナムでのホットトピックの割に、ノンフィクションベースの追徴事例があまりシェアされてないと感じます。あまりオープンにしたくない事象と思いますが、明確なルールがベトナム国内で策定されることを強く望みます。